高知県日高村で始まった"いきかえる、いきなおす、いきいき"プロジェクト。ACTION01「ストレス社会を食から考える」#いきいきではトマトと豆のゼリーの開発を行なっています。
そこで注目したのが、牧野富太郎も育てていたという土佐の伝統野菜土佐の八升豆。日高村では、日本一透明度が高い仁淀川の水と、土佐特有の力強い太陽によって、豊かに一定の環境下で育てたものを"土佐八升豆"という名称で栽培を始めました。
トマトと豆のゼリーの開発をはじめた話 vol.1
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しかし、日本ではまだ聞き馴染みのない八升豆。八升豆の研究第一人者の藤井義晴教授に土佐八升豆を栽培している様子を見に来ていただき、八升豆について詳しくお話を伺いました(全2回)。vol.1では八升豆の名前の由来、栽培方法などの基本情報をお届けします。
藤井義晴教授
農林水産省農業技術研究所、農業環境技術研究所、四国農業試験場、独立行政法人農業環境技術研究所などを経て、現在、東京農工大学 大学院教授。はっしょう豆を広げる活動を精力的に行なっている。
八升豆の研究第一人者に聞く! 土佐八升豆のまだ知られてない力 。全2回vol.1 〜いったいどんな豆なの?〜
vol.2 〜世界各国での活用法〜
八升豆、実は日本でも
昭和のはじめ頃までは育てられていた!?
───八升豆は多くの人にとってあまり聞き馴染みのない人が豆だと思うのですが、どの地域で育てられている豆ですか?
藤井:八升豆は日本古来種の豆です。昭和のはじめ頃までは、西日本を中心に全国で栽培されていました。原産地はインドとネパールの国境付近のタライ平原。熱帯〜亜熱帯地域に分布しているので、日本でも暖かい西日本に広まったのでしょう。
しかし日本では一度栽培が衰退してしまったため、現在全国各地で栽培されている八升豆は、私が東北大学農学部の駒嶺穆先生(当時)から分譲頂いたものを皆さんにお分けしたものが主です。
───日高村で育てている"土佐八升豆"も、藤井先生から日本古来種の八升豆を分けていただき栽培を始めました。八升豆、名前の由来は諸説あり!
───もともと八升豆という名前の由来はなんですか?
藤井:名前の由来は一本の苗から八升も豆が収穫できるとの説と、八丈島から伝わった八丈豆であるという諸説あります。しかし八升豆は日本での名称で、世界的には学名(属名)であるMucunaから、「ムクナ豆」と呼ばれています。
海外でも育てられてる豆。
日本古来種との違いって?
───海外でも広く育てられているようですが、日本で育てている古来種の八升豆と、海外で育てられている豆の違いはありますか?
藤井:あります。八升豆の鞘(さや)には、ビロード状の毛が生えており、皮膚にささるととてもかゆく、飲んで胃壁に刺さると危険です。特にインドの品種やアメリカの品種には、この毛がたくさん生えています。しかし、日本古来種のものは白色軟毛に覆われ、ちくちくする刺毛が少ない優良品種なんです。
また、日本の八升豆は冬になると枯れる一年生植物ですが、東南アジアでは多年生で木質の蔓性の種もあります。多年生のものは樹木として扱い、クズモダマ属、あるいはトビカズラ属と呼ばれます。一年性の種はハッショウマメ、あるいはオシャラクマメと呼ばれ、ハッショウマメ属と訳されます。
収量においては、亜熱帯地方では1ha(ヘクタール)あたり種子が1~5t(トン)、茎葉部が新鮮重で5~70t(トン)とされていますが、日本での栽培種の収量はもう少し少ないようですね。
───なるほど! 日本の古来種と海外のものでは、品種や特徴が異なっているんですね。
八升豆の正しい栽培方法
───日本で八升豆を栽培する場合、どの時期に種をまくのがいいですか?
藤井:遅霜(おそじも)の心配のない5月〜6月に種をまくのがいいです。先ほどもお話したように、日本では八升豆は一年生植物で成熟期間が比較的短いため、その時期に植えれば、9〜12月に収穫できる品種です。
───寒さに弱いため、暖かくなってから植える必要がありますね。それでは、どのような場所が栽培に適していますか?藤井:温暖な土地、乾燥しがちな軽い壌土、栄養があまりない土地で育てるのに適しています。また「一本の苗から八升も豆が収穫できる」とも言われている通り、かなり広範囲にツルが成長します。そのため1m〜3mと広めの間隔に苗を作って植え付けるのが良いですね。
───日高村で初めて土佐八升豆を育てた時、あんなに成長すると思っておらず...50cm間隔で植えてしまったのでジャングルみたいになりました(笑)。広めに間隔をとって植えるのは、大事なポイントですね! 他にも栽培するときに注意するべきポイントはありますか?藤井:八升豆は自然の除草剤とも言われるほど雑草に強いのですが、生育初期には除草する必要があります。また、種を取るためには5〜10mも伸びるツルを支えることができる丈夫な支柱を準備してください。八升豆は、開花期以降も成長が継続する無限伸育型の植物。だらだらと開花しますが、生育後期に咲いた花は十分に成熟しません。
寒さに弱く5℃に24〜48時間さらされると枯れてしまうため、霜が降りる前の10〜12月に熟した種子を収穫するのがいいでしょう。
───日高村で土佐八升豆を育てたときも、十分に成熟していない豆がありました。栽培方法や収穫時期が悪かったのかと思いましたが、それも八升豆の特徴なのですね。安心しました!
夏は暑く、秋も比較的温暖な高知は八升豆の栽培に適していることも分かり、とても嬉しいです。
八升豆の研究第一人者に聞く!
土佐八升豆のまだ知られてない力vol.2
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