
トマトと豆のゼリーの開発をはじめた話vol.1
〜コロナがきっかけだった〜
フルーツトマトの産地である日高村で、今まで捨てられていた規格外のトマトを使い、新しい商品を数多く開発してきました。今ではトマトを使った10種類近くの商品が販売されており、日高村内だけでなく全国に届けています。
そんなわのわ会を立ち上げ、地域の課題を解決するため20年間に渡り日高村で活動をしてきた、安岡千春さんに今までの活動や歴史についてお話しを伺いました。
かつては、規格外のトマトが年間5トン以上も捨てられていた
わのわ会がある高知県日高村は、高知を代表するフルーツトマトの産地。寒暖差が大きいトマト栽培に適した気候と、日本一きれいな仁淀川の水、豊かな自然の恩恵をたっぷりと受けて、おいしいフルーツトマトを作っています。
そんな日高村で生まれたブランドトマト「シュガートマト」は、フルーツトマトの中でも高糖度で酸味とのバランスがいいのが特徴です。シュガートマトとして出荷されるものは、糖度や酸味、形など、厳格な基準をクリアしたものだけ。そのため、基準をクリアしていていないトマトは出荷されることがなく、実は日高村内だけで規格外のトマトが年間5トン以上も廃棄されていました。

「規格外トマトもこんなにもおいしいのに、捨てるなんてもったいない!」
そんな状況をなんとかしたいと考えたのが、わのわ会でした。今から20年ほど前、規格外のトマトの買取りを始めたのです。きっかけはトマト農家さんのお手伝いに行った時におすそ分けしてもらった、規格外のトマト。
「農家さんに『規格外のトマトは捨ててしまうから、持って帰っていいよ』と言われていたんですが、こんなにおいしいのに捨てるなんてもったいない!と買い取って製品化しようと考えたんです」(わのわ会 ・安岡さん)
わのわ会では買い取った規格外のトマトを、パスタソースやピザソースなどに加工して販売を始めましたが、最初は思うように売れなかったそうです。トマトとトマト農家さんをサポートしたいと始めたことでしたが、「冷凍庫にたまっていくトマトのことを考えると、胃が痛くなる......」と、当時の加工担当者が話すほど、買い取った規格外のトマトはわのわ会の冷凍庫にいっぱいになっていきました。
そこでわのわ会の事務局長の安岡千春さんは「本気で売れる商品をつくらないといけない」と奮起し、食品加工や商品開発を学ぶことができる高知大学のプログラムに通い始めました。食品加工やマーケティングについて基礎から学び直し、商品の改良を重ねたことで、だんだんとトマトソースが売れるようになったそうです。

24トンの規格外のトマトで冷凍庫はいっぱいに
売上げが順調になってきた頃、わのわ会に第2の危機が訪れました。新規就農したトマト農家さんが「栽培に失敗をして、ハウス一棟分のトマトが、全て規格外になってしまった......」と相談に来たのです。規格外のトマトの総量は、なんと24トン。困っているならと、その全てのトマトを、わのわ会は買い取ることにしました。

しかし、24トンともなると冷凍庫で保管するだけでも、お金がかかります。
「このままではこのトマトを使い切るのに、何年かかるかわからない。どうにかトマトの販売方法を広げていかなければと、いろんな人に声をかけ、相談したりアドバイスを求めたりしました」(わのわ会 ・安岡さん)
その結果「トマトの加工食品を作っているから、原材料として買いますよ」という人が出てきたり、「冷凍トマトをそのまま販売したらいいんじゃないか」というアドバイスを受けて冷凍トマトの販売を始めたり、販路を拡大することに成功。
「おかげで、毎年の買い取りも進めながら約3年後には24トンすべてのトマトをさまざまな形で使い切ることができました」(わのわ会 ・安岡さん)
今では「トマトが足りない!」とうれしい悲鳴をあげるほど、日高村のトマトを使ったわのわ会の製品が全国に届けられるようになっています。
「人の困りごとを解決しようとしたら、逆に自分たちの困りごとがふくらんでしまった(笑)。だけど、ピンチはチャンス。困った時は『どう解決したらいいか』を考え続けていたら、どうにかなっていました」(わのわ会 ・安岡さん)

「本当に自分の家族に食べさせたい」と思えるものだけを作っています
わのわ会のトマトの製品は「あたためるだけ、かけるだけ、まぜるだけ」をモットーに作られています。忙しい時もパパッとすぐに、食卓に出せるものばかり。また、化学調味料や保存料は一切使わず、なるべく地元の食材を使い、丁寧に手作りしています。
「本当に自分の家族に食べさせたい、と思えるものだけを皆さんにもお届けします」(日高わのわ会 ・安岡さん)
「できる人が、できる時間に、できることを」
わのわ会で働いているのは、子育て中の"お母ちゃん"たちが中心です。子育てしながら働きたい。だけど、短時間や不規則な時間帯で働ける場所がないから「働きたいけど、働けない」。そう悩んでいる子育て世代のお母ちゃんたちが集まって、わのわ会は始まりました。
そして「できる人が、できる時間に、できることを」を理念に、お母ちゃんたちだけでなく、仕事を引退した元気な高齢者や障がいを持つ人たちも一緒に働いています。

困っている人がいれば助けるのは当たり前、根底にあるのは"お母ちゃん"のおせっかい
わのわ会の事業はトマトの加工製造だけでなく、高齢者の方のためのお買い物代行サービスや配食サービス、学校から帰ってきた小学生の子どもたちなどを預かる託児サービス、障がい者の方たちの就労支援など、多岐にわたっています。「隣にいる人が困っていることを解決していっていたら、ここまで事業が広がっていました」とわのわ会の事務局長であり創立者の安岡千春さんは話します。
実際に困っている人はいるけど、行政や民間企業が参入するのは難しい。そんな小さな小さな困りごとを、わのわ会は解決し続けています。
活動の根底にあるのはお母ちゃんたちの"おせっかい"。「村まるごと家族」だと思えば、困っている人がいれば助けるのも、声をかけあって支え合うのも当たり前。そんな温かい、人と人との繋がりを村全体に、そして社会全体に広げています。