
永井竜児教授平成11年3月熊本大学大学院医学研究科修了・博士(医学)。専門分野は、食品機能学、生化学。サウスカロライナ大学客員教員を経て、熊本大学大学院医学薬学研究部病態生化学講座・助教。日本女子大学・講師、東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調節学研究室准教授を経て、平成29年4月同教授。日本メイラード学会、日本抗加齢医学会、日本酸化ストレス学会等の評議員を務める。テレビ朝日系の「林修今でしょ!講座」、テレビ東京系「主治医が見つかる診療所」等にも出演。トマトの栄養素「リコピン」「エスクレオサイドA」に関して講義をし、トマトのパワーが大きな話題になった。
── 『Vol.1 発見は偶然から』で、エスクレオサイドAをどのように発見したのかを教えていただきましたが、エスクレオサイドAをより効率よく吸収する方法はありますか?
はい。まだ研究中の段階ですが麹とトマトを掛け合わせると、エスクレオサイドAを効率よく吸収できる可能性があります。
『〜Vol.1 発見は偶然から〜』でお話ししたように、エスクレオサイドAは、糖鎖という名前の大きな帽子を被っているイメージ。腸内細菌がその大きな帽子(糖鎖)を外し、エスクレオゲニンAという成分に変えてくれることで、体に吸収されるんです。
実は、人によって腸内細菌叢(そう)が異なるので、その糖鎖を外せず成分をうまく吸収できない人がいることが分かっています。つまり、食べたエスクレオサイドAを体内でエスクレオゲニンAに変化させて吸収できるかどうかは、その人のお腹の中に、どんな腸内細菌がいるのか次第なんです。

だったら、食べる前に糖鎖を取ってエスクレオサイドAをエスクレオゲニンAにしておけば、誰でも吸収できるのではないかと思い、研究を始めました。まずは糖鎖を外す成分として、乳酸菌はどうかと仮説を立てて、調べましたが......糖鎖を外してくれる乳酸菌はありませんでした。
── 簡単には見つからないのですね。
でも、乳酸菌以外のものでも調べてみたところ、なんときれいに糖鎖を外してくれたものが2つあったんです!
それが「麹」と「豚の糞便」です!
現時点では「麹と豚の糞便の中には糖鎖を取ってくれる菌がいる」ということがわかったところで、その中のどの菌が糖鎖を取ってくれたのかというのを、さらに調べています。とはいえ、麹の中に糖鎖を取ってくれる菌がいることは分かっているので、麹に漬けたトマトを掛け合わせて食べれば、トマトに含まれるエスクレオサイドAを効果的に吸収できるのではないかと思います。加えて、腸内環境を整えてご自分の腸の中の菌の種類を増やすことも大切ですね。
── 今回は、誰でもエスクレオサイドAを効率よく吸収するために行っている最先端の研究についてお話していただきました。永井先生、ありがとうございました。
次回はトマトを研究する永井先生が実践している、永井流トマトの食べ方を教えていただきます!
トマトに隠れたパワーあり!エスクレオサイドAの秘密
〜Vol.3永井先生に聞く!トマトの食べ方〜