いきいき(いきかえる、いきなおす)

いきいき(いきかえる、いきなおす)RELIFE PROJECT at HIDAKA VILLAGE

ACTION 01

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  • 良い変化を実感

    72.9 %
  • 寝つき改善

    16
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    33 %up
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トマトに隠れたパワーあり!
エスクレオサイドAの秘密
〜vol.1発見は偶然から〜

2024.07.23

近年の研究で発見された、トマトに含まれる "エスクレオサイドA"という成分。この エスクレオサイドAの研究を行っている東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調節学研究室の永井竜児教授に、この成分の力や、どのようにこの成分が発見されたのか発見秘話を伺いました(全3回)。

永井竜児教授平成11年3月熊本大学大学院医学研究科修了・博士(医学)。専門分野は、食品機能学、生化学。サウスカロライナ大学客員教員を経て、熊本大学大学院医学薬学研究部病態生化学講座・助教。日本女子大学・講師、東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調節学研究室准教授を経て、平成29年4月同教授。日本メイラード学会、日本抗加齢医学会、日本酸化ストレス学会等の評議員を務める。テレビ朝日系の「林修今でしょ!講座」、テレビ東京系「主治医が見つかる診療所」等にも出演。トマトの栄養素「リコピン」「エスクレオサイドA」に関して前述のテレビで講義をし、トマトのパワーが大きな話題になった。


── まずは、トマトに含まれているというエスクレオサイドAという成分について教えてください。


トマトに含まれている成分で有名なものといえば"リコピン"ですが、ミニトマトではリコピンのなんと21倍も含まれているのが"エスクレオサイドA"です。


エスクレオサイドA自体は体に吸収されにくいのですが、腸内細菌の働きで"エスクレオゲニンA"という成分に変身することで吸収されやすくなります。どうしてエスクレオゲニンAになる必要があるのか、簡単にご説明しましょう。

永井先生_vol.1_01.png

エスクレオサイドAは、糖鎖(注)という名前の大きな帽子を被っているとイメージしてみてください。


大きな帽子(糖鎖)を被っているエスクレオサイドAは、帽子がつかえて腸の表面の穴を通ることができないんです。すると、体に吸収されずそのまま腸内を素通りし、排出されてしまいます。しかし、そうなる前に腸内細菌が帽子を外し、エスクレオゲニンAに変えてくれれば、穴を通って体に吸収することができるんです。

(注)糖鎖:糖の分子が鎖状につながったもの。

── これまで発見されていなかったのはなぜですか?


リコピンは鮮やかな色がついていますが、エスクレオサイドAは白色で水に溶けると透明。そのため、他の成分と比べて、長く存在に気づかれなかった奇跡の成分なんです。


発見したのは私ではないんですよ。私が大学院の医学薬学研究部に助教として所属していた当時、同大学の薬学部天然物化学研究室で、食品成分の構造解析をしていた大学院生だった藤原章雄くんが発見しました。


構造解析というのは例えば、コーヒーの中に含まれているカフェインがどういう形でどういう構造なのかを解析する研究のこと。藤原くんは、本当に様々な食品成分の構造解析を行っていて、その中の1つがトマトでした。

トマトに含まれる成分の構造解析をするために、まずは「色がついているから、確実に何かしら成分がありそうなという試験管」と「色がついてないから、何も成分はないだろうなという試験管」に分けていくんです。


その中で、何も成分はないだろうとたまたま洗わず放置していた試験管から、1週間後に結晶が出てきたんです。結晶が出たってことはかなり高濃度な物質があるってことなんですよ。


で、分析用の機器で調べてみたところエスクレオサイドAが見つかったそうです。

── 偶然発見されたんですね!永井先生がエスクレオサイドAの実験をすることになったきっかけは何だったのですか?


もともと私は「血管の老化と食品栄養学の関係」に関する研究をしていたんです。その研究を始めたのは、父が糖尿病の悪化から脳梗塞で倒れてしまったことがきっかけでした。父は、40歳になって糖尿病を発症したのですが、特に仕事が忙しい時期は、食生活をなかなかコントロールできず過剰な糖質や脂質の摂取を繰り返し、血管を傷つけ、糖尿病を悪化させてしまったんです。


結果、合併症の脳梗塞で倒れ、半身付随と認知症になり、5年ほど療養した後、帰らぬ人となってしまいました。


それで私は、「血管の老化と食品栄養学の関係」そして、「病気を未然に防ぐ食品学」を研究しようと思ったんです。

P1110857.JPG(研究中の永井竜児先生)


研究を進める中で、どういうメカニズムで血管に油が溜まって、動脈硬化が進むのかはわかった。


じゃあ、それをどうやって食品に含まれる成分で予防するのかというのを研究しようと考えた時に、私には手段がなかったんですよね。


しかも、アメリカ留学から戻ったばかりで、全然研究費を持っていませんでした。

そんな時に、「食品成分の構造解析をしたのはいいけど、それが体に良いのか悪いのか、どのような作用をもたらすのか分からないから研究したい」という藤原くんに出会い、私が「お金はないけど、うちの研究室で一緒に研究を続けよう」って誘ったんです。

── なるほど、それでエスクレオサイドAを発見した藤原さんが永井先生の研究に参加されたわけですね。

そうなんです。


まずは、藤原くんが今まで、構造解析をする中でいろんな食品からとってきた成分を、なんでも良いから全部持って来てもらいました。


免疫細胞であるマクロファージに油(コレステロール)がたまるかどうかという細胞実験に、それらの成分を片っ端から入れていったんです。


全部で、何百種類もの成分を実験していました...(笑)


その時に持ってきてくれていた中のひとつが、トマトのエスクレオサイドAという成分でした。

──何百種類もの成分を......すごいですね!


藤原くんは僕にとって教え子というより戦友です(笑)。


ただでさえ薬学部から医学部に出向すること自体が異例ななか、当時はお金のない助教だった私のところにきてくれたっていうのも、そりゃ、うれしかったですね。『焼き鳥屋でビール一杯おごった程度でよくきてくれたね』って今でも話します(笑)。

その後私がいる研究室は、薬学部から来た大学院生が一番いる研究室になりました。

よく『なんで先生のところにはそんなに、人が集まるんですか?』って聞かれるんですけど、それは単純にわくわくすることをやっていたから。私は助教だから、彼らに単位を出すこともない。ただわくわくする研究を一緒にやるだけ。

DSC00067.JPG(薬学から来た大学院生らと、永井先生の飲み会の様子)

「なぜ、トマトを食べるんですか?」って聞かれたら「だって美味しいんだもん」っていうのと一緒で、「なぜ、研究するんですか?」って聞かれたら「だって面白いんだもん」っていう。本能的に面白いと思うことをやっていたら、自然と人が集まっていました。

── 面白いと思えることをやっていたら、出会えたのがエスクレオサイドAだったんですね。いくつもの偶然や出会いを経て発見されたエスクレオサイドAは、まさに"奇跡の成分"です。永井先生ありがとうございました。


トマトに隠れたパワーあり!エスクレオサイドAの秘密
〜Vol.2エスクレオサイドAの吸収率をUPさせる方法〜